3/2(月)夕ご飯 アラビアータ

3/2(月)夕ご飯 アラビアータ

仕事を終え、急ぎ足で駅に向かう。

恐らく妻も同じ行動を取っているであろう。

 

明日は二人とも休みなのだ。

久しぶりの二人揃っての平日休み。その前夜となれば否が応でも盛り上がる。

そして、今日の宴のメニューは決まっている。

「おうちイタリアン」

パスタが食べたい僕と、チーズが食べたい妻。そんな二人の共通事項は、ワインが飲みたい。

僕たちはがっちりと手を組んだ。

二人の希望がこれでもかと詰まった夜。乾杯の音も、いつもよりワンオクターブ高い気がする。

そう感じるのは、僕たちの気持ちが六オクターブほど高いからだろう。

天まで登る湯気をくぐり抜け、アラビアータを口に運ぶ。

 

美味しい………。

 

妻曰く「パスタはニンニクだ」。

その格言が実行できるのは、今日しかない。

明日は二人とも休みなのだ。

 

ニンニクがしっかりと効いたパンチのあるその味は、妻の格言の説得力を倍増させる。

もしここに、ニンニクがなかったら…。

尊敬の眼差しを妻に送ると、何かから解放されたような表情を浮かべていた。

そうか。妻は「美味しく作る」というプレッシャーと戦っていたのだ。

僕は全幅の信頼を置いているが、そのぶん妻は「失敗できない」という気持ちを持っているのだろう。

妻の責任感と実績に感謝するように、赤ワインを流し込むと、瞬く間に全身に行き渡った。

 

「美味しい」

 

このワインは近所のスーパーで売っていた安いワインだ。

しかし、僕の体感ではラングドックのヴィンテージワインのように感じられる(飲んだことは、ない)。

アラビアータが、赤ワインを引き立てている。

 

そう確信した僕が改めて妻を見ると、不敵な笑みを浮かべながらブルーチーズを堪能していた。

 

やはり、すべてお見通しだったのか。

 

僕がパスタとワインという希望を伝えた瞬間から、妻にはこの画が見えていたのだろう。

自分が思い描いた景色が、実際に目の前で繰り広げられる快感は計り知れないものがある。

 

僕には当分掴めない世界だ。

 

何故そう言い切れるか?

 

僕が用意したネギと豆腐のサラダが、絶望的にワインに合わなかったのだ。

 

悲哀を打ち消すように食べた生ハムが、いつもよりしょっぱく感じた。

  

 

と、いつもならここで終わってしまうが、その塩気さえワインのアテに代わってしまうのだから、前夜祭はさらに盛り上がっていくのであった…。

 

妻に感謝し、完食。ごちそうさまでした。

・まとめの一言

美味しかった。